人材業界でキャリアを積んだ方や人材業界で起業したい方のなかには、「人材派遣会社は1人でも設立できるのだろうか」と考えている方も少なくありません。
そこで、本記事では、人材派遣会社が1人でも設立できるかどうかという問いに回答いたします。1人で人材派遣会社を設立する際に立ちはだかるハードルについても解説しますので、参考にしてください。
人材派遣会社は1人でも設立できる?
結論からいうと、人材派遣会社は1人で設立ができません。
人材派遣会社を経営するためには、派遣元責任者と、派遣元責任者に何かあった時に代わって対応する職務代行者の計2名が最低限必要であるためです。
派遣元責任者と職務代行者の2名がいないと、労働者派遣事業の許可を受けられません。つまり、1人で人材派遣会社を立ち上げるのは理論上、不可能なのです。
ウェブ上では、「人材派遣業は個人でも開業可能」「一人で会社設立+派遣許可を取れる」といった記事も見受けられますが、実際は許可取得上、登場人物が2人ですので、一人で開業する方は、どなたかを雇用する必要が出てきます。
1人で人材派遣会社を設立する際に立ちはだかるハードル
1人で人材派遣会社を立ち上げるのが難しいのは、派遣元責任者と職務代行者の2名が必ず必要という要件だけではありません。次の許可基準も、個人での人材派遣会社設立を妨げる要因となっています。
- 基準資産額のクリア
- 派遣元責任者や職務代行者に課される常勤性
- 派遣業を行うための事務所の確保
ここからは、個人が人材派遣会社を設立するうえでの3つのハードルについて解説します。
基準資産額のクリア
まず労働者派遣事業の許可を受けるうえでは、派遣事業を行う事業所ごとに2,000万円以上の基準資産額(資産の総額から負債の総額を控除したもの)が求められます。
また基準資産額が負債総額の7分の1以上であること、自己名義の現金・預金の額が、事務所ごとに1,500万円以上であることも必要です。
これらの資産要件を充足するのは、人によっては高いハードルです。なかでも、借り入れなどを行わず、蓄財した純粋な資産のみで起業したい方にとっては、2,000万円の基準資産額を中心に要件をクリアするのが難しいのではないでしょうか。
出資者を募る、何人かで資本金を持ち寄り経営する、というスタイルの開業も視野に入れておく必要があるかもしれませんね。
派遣元責任者に課される常勤性
派遣会社に配置する派遣元責任者は、社会保険に加入した常勤社員でなければなりません。これらの業務担当者は、派遣労働者に苦情その他の問題が発生したときに、迅速な解決を図ることや適正な就業を確保することが求められるためです。
このような常勤義務により、派遣元責任者は、他の法人を経営している経営者や他の会社に在籍している社員を置くことができません。
ただし、人材派遣会社を経営する代表取締役は、派遣元責任者を兼務することが可能です。それでも、その代表取締役が複数の会社を経営しており、いずれの会社でも代表取締役になっている場合は、兼務を認められない場合があります。
派遣業を行うための事務所の確保
派遣業を行うには、業務を適正に行える事務所を用意しなければなりません。具体的には、次のような要件をクリアする必要があります。
- 事務所が風俗営業や性風俗特殊営業などが密集するといった事業の運営に好ましくない位置にないこと
- 事業所の労働者派遣事業に使用し得る面積がおおむね20㎡あること
これらの要件に加え、同じ事務所に複数の会社が同居していないことや、個人情報などが適性に管理できる状態にあることなども求められます。
このように事務所設置に関する要件も、高い許可基準が課せられます。したがって、自宅や1人会社が登記するようなレンタルオフィスで、事務所設置に関する要件をクリアするのはなかなか難しいと言えます。
初期費用や事業が軌道に乗るまでの運転資金をなるべく最小限に抑え、かつ許可を取得するのはなかなか難しく、また準備も大変です。
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